CT検査の限りない創造を目指して

東北Conference on Contrast Media が終了しました

 東北Conference on contrast Media が2月12日(土)に仙台市の江陽グランドホテルで開催されました。当日はあいにく小雪が舞う寒い日でしたが東北6県からの参加者が主催者の予想以上に多かったようで、急きょ席を増やしている状態でした。内容は、肝の造影CTにおける至適造影剤量とMRI造影剤におけるNSFの講演でした。何れも日本を代表する先生の講演であり、海外の文献なども多用しながらの質の高い内容でした。

日時 平成23年2月12日(土)15:00〜17:10
場所 江陽グランドホテル(仙台市)
プログラム
特別公演1
  テーマ  腹部CT
  座長 東北大学大学院医学系研究科 量子診断学分野 教授 高橋昭喜 先生
  「肝の造影MDCT ー至適造影剤量を考えるー」
  講師 岐阜大学医学部付属病院 放射線科 講師 近藤浩史 先生
特別公演2
  テーマ  MRI
  座長 秋田大学大学院医学系研究科 放射線医学講座 教授 橋本 学 先生
  「MRI造影剤の安全性と今後の展望 ーNSF問題とは何だったのかー」
  講師 浜松医科大学医学部付属病院 放射線部 病院教授 竹原康雄 先生

【内容】
特別公演1 「肝の造影MDCT ー至適造影剤量を考えるー」
 造影MDCTにおける肝実質濃染の規定因子には、造影剤量や濃度などの検査施行側の因子と体重、脂肪、循環血液量などの被検者側の因子があり、肝実質濃染についてはこれらを絡めて考える必要がある。肝の造影MDCTにおいて至適な肝実質濃染は一般的に「造影する前から50HU以上」と認識されており、Heikenの報告でも立証されている。それを基に至適ヨード量を検討するわけであるが、その目的は診断に十分な臓器濃染が得られ患者間での濃染のばらつきを減らすことにある。至適ヨード量における過去の報告は様々あるが、Heikenが指標としたAdjusted MHE(〔投与ヨード量gl/体重kg〕=〔希望する肝実質濃染△HU/補正肝実質濃染(△HU/gl/kg)〕)96は肝実質濃染を50HUとした場合〔投与ヨード量/体重〕=521mgl/kgと算出でき、多くの論文はこの値に近い数値を示している。従って、50HUを得るための総体重を基にした至適ヨード量は安全域などを考慮すると512〜600mglが妥当と考えられる。しかし、例へば体重100kgの患者の肝実質を50HU上昇させたい場合、300mgl/mL製剤であれば174mL必要となり現実的に困難となる。Adjusted MHEに対する体脂肪率の影響について161例で調査した結果、ヨード1gで上昇するCT値が低体重群に比べ高体重群の方が高く、高体重群においては造影剤の過剰投与が示唆せれた。また、Adjusted MHEは体脂肪率上昇と共に増加し、必要ヨード量は体脂肪率が上昇すると減少する結果となった。そこでAdjusted MHEおよび肝実質濃染上昇(△HU/gl)について総体重(TBW)、除脂肪体重(LBW)、循環血液量(Blood Volum)の関係を比較した結果、肝実質濃染上昇(△HU/gl)、Adjusted MHE共にLBWと相関が得られ、TBWやBlood Volumと比較して良い関係を示した。更にLBWを550、650、750mgl/kgと変化させて行った検証では、650mgl/kgが必要であると考えられた。これらの結果から除脂肪体重を加味したモノグラムを作成した結果、肥満度の高い患者の造影剤量を減量できると共に臓器濃染のばらつきが少なくなることが確認された。しかし、実際の臨床で検査ごとに体脂肪を計測するには、手間がかかるため体表面積で代用できないかと考えた。前項同様にAdjusted MHEおよび肝実質濃染上昇(△HU/gl)についてTBW、LBW、体表面積(BSA)との関係を調べた結果、両者ともBSAで良好な相関を得られた。50HU濃染を得るための必要ヨード量は18.6gl/uと算出された。至適造影剤量の規定方法としてLBWは適しているが、BSAは身長と体重から簡便に求めることも可能であり、LBWの代用が可能と考えた。
 造影剤量の規程方法として現在主流のTBW(総体重)に変わってLBW(除脂肪体重)やBSA(体表面積)が有用であることを理論的に解説し、近い将来主流になる事を確信することの出来る講演でした。

特別公演2 「MRI造影剤の安全性と今後の展望 ーNSF問題とは何だったのかー」
 MRIのガドリニウム造影剤は、当初腎毒性がないとされていたのになぜNSFは起こり、腎毒性はあるのか、NSFが起こった背景には誤った使用法があり、正しい使用法を心がければ、今でも腎毒性はないと思っている。しかし、NSFに関して我々は、安易に造影検査を選択していたこと、造影剤使用時は腎機能にのみとらわれていたことなど反省する点も多く、真摯に受け止めなければならない。私はカリフォルニア大学サンフランシスコ校に留学中におそらく初めてガドリニウム造影剤を使用した日本人である。当時は大学でも安全性が評価されていたことから2倍投与で新しい情報が得られるのではないかと様々な検討を行った。以後20年を経過するがNSFの問題は後半の10年に現れたものであった世界全体の造影剤使用量の58%を行っているアメリカで最も多く全体の67%である。日本は、アメリカの1/3の造影剤使用量であるが13名しか報告されていない。世界的にみるとNSF発生の特徴は高度腎障害(eGFR<30)にのみ発生していたことや1回の投与量が2倍以上であったことなどが文献により報告されている。投与量の増加の要因としてPrinceが1994に発表したMRAがある。重篤な造影剤腎症を引き起こすX線検査を選択しなくて済むという背景がある。1994以降ガドリニウム造影剤は腎機能を落とさないという論文が多く発表され、MRIの撮像方法(セントリック:K-spaceの中心から信号を埋めていく方法など)の特性から造影効果の長時間維持の必要性も重なり投与量は更にエスカレートした。一方でX線造影剤としての研究も進められた。Gd(ガドリニウム)のX線吸収ピークはヨードと比較しても遜色なく80mlあるいは40〜200mlを使用したとの報告もある。NSFの発症はFDA(米国食品衣料品局)の勧告以後は0であり、実効性は証明されている。世界では年間1600万本の造影剤が使用されており、日本では140万本である。過去6年間に13例が報告されており、発生頻度は100万人に1〜2例で世界と比較して格段に少ない。背景には腹膜透析患者が少ないこと、容量が20mlを超えないことを明記した添付文書などがあると考えられる。透析患者にGd造影剤を使用した場合のNSF発症のリスクは2.4〜9%との報告があり幅がある。NSFの死亡率は56%との報告が2009年10月号のRadiologyで紹介された。ヨード造影剤とGd造影剤の選択選択については、腎機能が残存する場合は、Gdを選択すべきであり透析中であればヨードを選択するほうがようと考えている。Gd造影剤の使用に当たっては、非造影MRIやDWIなど代用できるものはないか考えると同時にeGRFを測定し、eGRF<30であれば使用しないことが重要である。NSFの発症頻度は、アナフィラキシーショックによる死亡の頻度と同じくらいであると念頭におきバランスのとれたガイドラインを構築咲いていく必要がある。
 NSFに対しては必要以上に敏感になることはなく、必要であれば使用料とeGRFの基準をクリアすれば問題ないことが確認できました。

 
満員の会場
 

 
講師の近藤浩史先生

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