第28回岩手県CT研究会を開催しました
【第28回岩手県CT研究会】
日 時 平成27年8月29日(土)13:00〜16:30
場 所 岩手県立久慈病院
参加者 53名
平成27年8月29日、岩手県立久慈病院にて第28回岩手県CT研究会を開催いたしました。
北部地区での開催は、平成19年の第7回に次ぎ2回目となります。
今年の夏は各地で猛暑日が記録される中、岩手では盆入り頃からは一転して涼しい日が続きました。
開催地の久慈市は、やませの影響で夏でもそうそう晴れない土地と聞いていましたので逆に肌寒さが感じられるのかと思われましたが、研究会開催にはちょうど良い気候でした。
今回のテーマは「CT Colonography」とし、県南部の施設を含め多数参加され、関係業界の方々を含めると53名の参加を頂きました。
日常的にCTCを行っている施設はまだ少なく検査数も限られていましたが、大腸がんの死亡率の高さや今後のCTCに期待する背景もあり
予想を超えての参加者数でCTCへの関心の高さが窺えました。
研究会に先立ち、県立久慈病院の施設見学が行われ、プログラムに沿って県内5施設より施設報告を頂き、技術講演、特別講演の構成で会が進められました。
会場内ではメーカーによる、前処置用バリウム、検査食と検査パターンに応じた検査食の取り方パンフレット(患者様用)見本、炭酸ガス自動送気装置等の展示も開催と同時に行われました。
施設報告では、主に大腸CTの経験と現状を中心に演者の皆様よりご発表がありました。
各演者より自施設でのCTCの運用法について、問診から前処置、検査説明、炭酸ガス注入、撮影、画像処理、1次読影といった流れの中で
岩手県立久慈病院 成谷一樹氏は、月1.7件と検査件数が少ないために技術の向上が難しく高齢者も多いため対応に苦慮している。
小腸へのガス流出例が多く、拡張不良、苦痛を訴える等の問題点が挙げられた。
課題として、経験を養う為の件数の獲得には、他科との連携や周囲へのアナウンスが必要であるとした。
岩手県立二戸病院 松村隆幸氏は、CFとCTCの利点欠点について述べ。術者によって細かいくせに異存し、腸管の重なりや走行によってはしばしば描出が困難となる例があるCFに対し、CTCの仮想注腸像では術者に異存しにくく、前処置の不良例では殆ど観察できない場合もあるとした。CTCの評価として、仮想注腸像では大腸の走行確認、切除範囲の決定について用いることが出来、血管構築像では、腹腔鏡下手術の術前シュミレーションに有用であり、外科医からの評価を得た。また大腸内視鏡では困難であった例におけるCTCの有用性を示したと言えた。
岩手医大 鎌田雅義氏は、検査システムの構築されてない環境の中で数少ない症例(5年で11症例)を基にCTCの役割について述べた。大腸内視鏡検査の受診率が低いのでその前段階の検査として位置づけ、他院からの紹介などでCFで入らなかった症例などを中心に紹介した。
また、各社WSの大腸解析ソフトでの比較を行い、VGPでは、均等に広げる機種、色の違いで重なりを表現する機種、腸管の太さに応じて変化する機種等、見え方、表現方法において各社の特徴を示した。
問題点としては、前処置の事。殆ど検査の良し悪しがこれで決まり、不安定要素が多い検査である。
大腸CTのエビデンス、感度特異度は非常に高くて良い検査であるが、中々県内でも自施設でも多く行われていないというのが現状で、"検診とセットでCTCも選択肢の一つですよ"というアピールをする事で受診率も上がるのではないかと述べた。
岩手県立胆沢病院 高橋大樹氏は、自施設が抱える運用上の問題点を示し、それがCTCという検査においては極めて重要な検査技術に結びついていない点を指摘した。過去1年で49症例を経験したものの、現在は、手術が決まった患者しか行われていなく、病変が分かっている中での検査で分かりやすいが、今後スクリーニングをしていくことになった場合、適切な画像を提供出来るように気を付けていく必要があるとした。
せいてつ記念病院 駒木俊明氏は、CTCに取り組んで丸3年、92例を経験された。主な検査目的は、大腸がん検診の2次スクリーニングであり、前処置はブラウン法(58%)とゴライテリー法(31%)を使い分けをしていた。特にブラウン法では患者様の取り組み方、真剣さによって精度が変わって来るため、高齢者、認知症の方にはゴライテリー法を用いていた。自施設の現状として、外注している内視鏡検査の結果の収集が最近行われ始め、やっとCTCとの比較が行える環境が整ったとの事。常勤、消化器内科医不在でのCTCは色々と問題点が多く、専門外の医師による結果説明では、有所見があった時の紹介先の選定が大事になって来るとした。読影レポートには、所見グレードにあった紹介先の記入を行う事で医師の負担なく患者の都合を聞きつつ紹介でき、医師の負担も軽減しつつ患者の不利益も回避出来るデリケートな対応が必要とした。
技術講演では、伏見製薬株式会社の竹内修平先生によりご講演を頂きました。
大腸のCT検査は、負担が少なく需要性に富んだ精度の高い検査と言われ、
大腸がんの2次検診の向上と大腸がんの死亡率の減少に通じる最善の道という事でした。
竹内先生には、新しい検査に対する医薬品としての前処置用バリウムとFG TWO(検査食)、タギング、遠隔読影サービスのお話を頂きました。
その中で、FG TWOに関しては、検査に適切な腸管状態をコントロールし腸内の残渣物の排泄をする役割を持つという紹介がなされました。
従来の低残渣、低脂肪と異なり、脂肪を配合する事でおいしさを引き出し、
水溶残渣を形成する事と適度な脂肪成分を含有する事で腸管壁への便の付着を阻害しているそうです。
実際には、白米を使用しボリューム感を持たせ、電子レンジでの調理が可能で、おかゆとスープ、カレーとスープ、親子丼とスープ などの組合せで取ります。
お勧めの前処置検査食としては @高張液とFG TWO A等張液半量とFG TWO B 等張液とFG TWOの順となり、
前処置をいかに軽減し、下剤の服用量も少なく、満足感のある検査食がポイントとなるとした。
また、経口造影剤の役割も重要で、硫酸バリウム、ガストログラフィンなど、
残便残液を高濃度領域として標識することで病原と識別することが可能となるとした。
特別講演の岩手県立久慈病院の熊谷由基先生には、『消化管悪性腫瘍のstaging』と題し、ご講演をいただきました。
序盤から中盤にかけて、CTCの現状から自施設のCTC検査法そして読影法までを詳細に紹介されました。
その中で、胃がんと大腸がんの死亡率の違いとして検診の在り方が関わっているのではないかとした。
早期大腸がんであれば治るといわれているにも関わらず、死亡率が増え続けているのはなぜか?
そこには、便潜血陽性になったけど次の大腸ファイバーを受診しない人たちがかなりいるらしいという事。
そして、これを何とか変える方法はないかという事でみんなCTCを始めたものの、中々普及に至らないのが現状であるとした。
まだまだCTCが認知されないのには、とある抵抗勢力も関係しているようですが、検査精度の問題も絡んでいるのではないかと思われました。
先生からは、これらを打破するに為にも放射線技師がマンパワーでバンバン頑張ってやって欲しいとのお話であった。
また、自施設のCTCの検査については、前処置、炭酸ガス注入、撮影、画像処理、1次読影と読影といった流れの中で、
それぞれの要素が重要で、どれを欠かしても良い結果に結びつかないことが窺えました。
読影に関しては、1次読影として放射線技師も行なっていて、医師と読影の方法が全く異なる事を紹介されていた。
講演終盤は読影をするにあたりどのような病変を見つけなければならないかという病期分類のお話で、
深達度やリンパ節転移において押さえておかなければならない点、特に手術手技に関わる深達場所の記載など、
放射線技師が1次読影をするにあたり必要なポイントを解説して頂きました。
熊谷先生の飾らなく分かりやすい語り口に会場の皆が引き付けられ、あっという間の1時間でした。
また、先生のご指導のもと久慈病院のスタッフの皆さんが1次読影を行いとてもいい仕事をされている事に触れ、頑張れる環境が羨ましく思われました。
各発表ごとに、多くの質疑が繰り広げられ、消化管診断、CTCの関心の高さを実感すると同時に、
今後CTCを行う施設が増えるのではないかと期待できるものでした。
お陰様で大変充実した研究会となり、学ぶことの多い会だったと思います。
この場をお借りし、関係者の皆様方へ厚く御礼申し上げます。
※下線の発表スライドはPDF形式で公開しております
日 時 平成27年8月29日(土)13:00〜16:30
場 所 岩手県立久慈病院
参加者 53名
平成27年8月29日、岩手県立久慈病院にて第28回岩手県CT研究会を開催いたしました。
北部地区での開催は、平成19年の第7回に次ぎ2回目となります。
今年の夏は各地で猛暑日が記録される中、岩手では盆入り頃からは一転して涼しい日が続きました。
開催地の久慈市は、やませの影響で夏でもそうそう晴れない土地と聞いていましたので逆に肌寒さが感じられるのかと思われましたが、研究会開催にはちょうど良い気候でした。
今回のテーマは「CT Colonography」とし、県南部の施設を含め多数参加され、関係業界の方々を含めると53名の参加を頂きました。
日常的にCTCを行っている施設はまだ少なく検査数も限られていましたが、大腸がんの死亡率の高さや今後のCTCに期待する背景もあり
予想を超えての参加者数でCTCへの関心の高さが窺えました。
研究会に先立ち、県立久慈病院の施設見学が行われ、プログラムに沿って県内5施設より施設報告を頂き、技術講演、特別講演の構成で会が進められました。
会場内ではメーカーによる、前処置用バリウム、検査食と検査パターンに応じた検査食の取り方パンフレット(患者様用)見本、炭酸ガス自動送気装置等の展示も開催と同時に行われました。
施設報告では、主に大腸CTの経験と現状を中心に演者の皆様よりご発表がありました。
各演者より自施設でのCTCの運用法について、問診から前処置、検査説明、炭酸ガス注入、撮影、画像処理、1次読影といった流れの中で
岩手県立久慈病院 成谷一樹氏は、月1.7件と検査件数が少ないために技術の向上が難しく高齢者も多いため対応に苦慮している。
小腸へのガス流出例が多く、拡張不良、苦痛を訴える等の問題点が挙げられた。
課題として、経験を養う為の件数の獲得には、他科との連携や周囲へのアナウンスが必要であるとした。
岩手県立二戸病院 松村隆幸氏は、CFとCTCの利点欠点について述べ。術者によって細かいくせに異存し、腸管の重なりや走行によってはしばしば描出が困難となる例があるCFに対し、CTCの仮想注腸像では術者に異存しにくく、前処置の不良例では殆ど観察できない場合もあるとした。CTCの評価として、仮想注腸像では大腸の走行確認、切除範囲の決定について用いることが出来、血管構築像では、腹腔鏡下手術の術前シュミレーションに有用であり、外科医からの評価を得た。また大腸内視鏡では困難であった例におけるCTCの有用性を示したと言えた。
岩手医大 鎌田雅義氏は、検査システムの構築されてない環境の中で数少ない症例(5年で11症例)を基にCTCの役割について述べた。大腸内視鏡検査の受診率が低いのでその前段階の検査として位置づけ、他院からの紹介などでCFで入らなかった症例などを中心に紹介した。
また、各社WSの大腸解析ソフトでの比較を行い、VGPでは、均等に広げる機種、色の違いで重なりを表現する機種、腸管の太さに応じて変化する機種等、見え方、表現方法において各社の特徴を示した。
問題点としては、前処置の事。殆ど検査の良し悪しがこれで決まり、不安定要素が多い検査である。
大腸CTのエビデンス、感度特異度は非常に高くて良い検査であるが、中々県内でも自施設でも多く行われていないというのが現状で、"検診とセットでCTCも選択肢の一つですよ"というアピールをする事で受診率も上がるのではないかと述べた。
岩手県立胆沢病院 高橋大樹氏は、自施設が抱える運用上の問題点を示し、それがCTCという検査においては極めて重要な検査技術に結びついていない点を指摘した。過去1年で49症例を経験したものの、現在は、手術が決まった患者しか行われていなく、病変が分かっている中での検査で分かりやすいが、今後スクリーニングをしていくことになった場合、適切な画像を提供出来るように気を付けていく必要があるとした。
せいてつ記念病院 駒木俊明氏は、CTCに取り組んで丸3年、92例を経験された。主な検査目的は、大腸がん検診の2次スクリーニングであり、前処置はブラウン法(58%)とゴライテリー法(31%)を使い分けをしていた。特にブラウン法では患者様の取り組み方、真剣さによって精度が変わって来るため、高齢者、認知症の方にはゴライテリー法を用いていた。自施設の現状として、外注している内視鏡検査の結果の収集が最近行われ始め、やっとCTCとの比較が行える環境が整ったとの事。常勤、消化器内科医不在でのCTCは色々と問題点が多く、専門外の医師による結果説明では、有所見があった時の紹介先の選定が大事になって来るとした。読影レポートには、所見グレードにあった紹介先の記入を行う事で医師の負担なく患者の都合を聞きつつ紹介でき、医師の負担も軽減しつつ患者の不利益も回避出来るデリケートな対応が必要とした。
技術講演では、伏見製薬株式会社の竹内修平先生によりご講演を頂きました。
大腸のCT検査は、負担が少なく需要性に富んだ精度の高い検査と言われ、
大腸がんの2次検診の向上と大腸がんの死亡率の減少に通じる最善の道という事でした。
竹内先生には、新しい検査に対する医薬品としての前処置用バリウムとFG TWO(検査食)、タギング、遠隔読影サービスのお話を頂きました。
その中で、FG TWOに関しては、検査に適切な腸管状態をコントロールし腸内の残渣物の排泄をする役割を持つという紹介がなされました。
従来の低残渣、低脂肪と異なり、脂肪を配合する事でおいしさを引き出し、
水溶残渣を形成する事と適度な脂肪成分を含有する事で腸管壁への便の付着を阻害しているそうです。
実際には、白米を使用しボリューム感を持たせ、電子レンジでの調理が可能で、おかゆとスープ、カレーとスープ、親子丼とスープ などの組合せで取ります。
お勧めの前処置検査食としては @高張液とFG TWO A等張液半量とFG TWO B 等張液とFG TWOの順となり、
前処置をいかに軽減し、下剤の服用量も少なく、満足感のある検査食がポイントとなるとした。
また、経口造影剤の役割も重要で、硫酸バリウム、ガストログラフィンなど、
残便残液を高濃度領域として標識することで病原と識別することが可能となるとした。
特別講演の岩手県立久慈病院の熊谷由基先生には、『消化管悪性腫瘍のstaging』と題し、ご講演をいただきました。
序盤から中盤にかけて、CTCの現状から自施設のCTC検査法そして読影法までを詳細に紹介されました。
その中で、胃がんと大腸がんの死亡率の違いとして検診の在り方が関わっているのではないかとした。
早期大腸がんであれば治るといわれているにも関わらず、死亡率が増え続けているのはなぜか?
そこには、便潜血陽性になったけど次の大腸ファイバーを受診しない人たちがかなりいるらしいという事。
そして、これを何とか変える方法はないかという事でみんなCTCを始めたものの、中々普及に至らないのが現状であるとした。
まだまだCTCが認知されないのには、とある抵抗勢力も関係しているようですが、検査精度の問題も絡んでいるのではないかと思われました。
先生からは、これらを打破するに為にも放射線技師がマンパワーでバンバン頑張ってやって欲しいとのお話であった。
また、自施設のCTCの検査については、前処置、炭酸ガス注入、撮影、画像処理、1次読影と読影といった流れの中で、
それぞれの要素が重要で、どれを欠かしても良い結果に結びつかないことが窺えました。
読影に関しては、1次読影として放射線技師も行なっていて、医師と読影の方法が全く異なる事を紹介されていた。
講演終盤は読影をするにあたりどのような病変を見つけなければならないかという病期分類のお話で、
深達度やリンパ節転移において押さえておかなければならない点、特に手術手技に関わる深達場所の記載など、
放射線技師が1次読影をするにあたり必要なポイントを解説して頂きました。
熊谷先生の飾らなく分かりやすい語り口に会場の皆が引き付けられ、あっという間の1時間でした。
また、先生のご指導のもと久慈病院のスタッフの皆さんが1次読影を行いとてもいい仕事をされている事に触れ、頑張れる環境が羨ましく思われました。
各発表ごとに、多くの質疑が繰り広げられ、消化管診断、CTCの関心の高さを実感すると同時に、
今後CTCを行う施設が増えるのではないかと期待できるものでした。
お陰様で大変充実した研究会となり、学ぶことの多い会だったと思います。
この場をお借りし、関係者の皆様方へ厚く御礼申し上げます。
※下線の発表スライドはPDF形式で公開しております